MPGN・C3腎症の
薬物療法

このページでは、「膜性増殖性糸球体腎炎(まくせい・ぞうしょくせい・しきゅうたい・じんえん:MPGN)やその一部であり新しい分類であるC3腎症(じんしょう)ではどのような薬物療法が患者さんに行われるのか」について解説します。

腎臓(じんぞう)を守りながら病気の進行を止める

MPGN(C3腎症を含む)(以下、MPGN・C3腎症と略します)の治療において大切なのは、次の2つです。

  • 腎臓の病気そのものを止めること
  • 腎臓を保護すること

そのために、主に次のことに取り組みます。

  • 薬物療法(やくぶつりょうほう:薬による治療)
  • 食事の見直し
  • 生活習慣の見直し

このページでは「薬物療法」について紹介します。
薬物療法では目的にあわせてさまざまな薬を治療のために使います。
飲み薬もあれば、注射(ちゅうしゃ)や点滴(てんてき)の薬もあります。

「食事の見直し」と「生活習慣の見直し」についてくわしく知りたい方は「MPGN・C3腎症の治療中の注意点」のページをお読みください

病気をターゲットにした薬

病気の進行を食い止める薬物療法

薬を服用する目的のひとつは、腎臓の病気や炎症が進行しないように止めることです。
病気そのものが悪くならないようにするために、以下のような薬を服用します。

補体をターゲットにした薬

主にC3腎症の患者さん向けの治療では、補体阻害薬(ほたいそがいやく)という薬が使われます。3)
補体阻害薬とは、病気を引き起こす原因と考えられている補体(ほたい:C3をはじめとした抗体をサポートしているタンパク質のグループのこと)の活発なはたらきを直接おさえる薬です。

薬の種類期待される効果薬の使い方
補体(C3)阻害剤C3のはたらきをおさえる
  • 患者さんが自分で注射します
  • 皮下注射薬(ひかちゅうしゃやく)なので、一般的な注射よりも皮ふの表面に近い場所に薬を打ちます
補体B因子(ほたいビーいんし)阻害剤C3を活発にする役目をもつ補体B因子のはたらきをおさえる飲み薬
補体阻害薬の副作用とは?

副作用とは、薬を服用したことによって本来の目的以外のよくない効果が出てしまうことを意味します。
補体阻害薬には免疫のはたらきを弱くするはたらきがあります。
この薬を治療に使う場合には、感染症を疑うような高熱などの症状が出たら、病院をすぐに受診してください。
手洗い・うがいやワクチン(予防接種)などの感染症対策に注意する必要があります。

特に、次の3種類のワクチンは必ず打つようにしましょう。

  • 髄膜炎菌ワクチン
  • 肺炎球菌ワクチン
  • インフルエンザ菌b型ワクチン(ヒブワクチン)

炎症そのものをおさえこむ薬

免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)とは、MPGN・C3腎症と深くかかわっている活発な免疫のはたらきをおさえる薬です。
免疫抑制剤には以下のような種類があります。

薬の種類期待される効果薬の使い方
副腎皮質ステロイド1)
  • 糸球体の炎症をおさえる
  • MPGN・C3腎症を引き起こしていると考えられる抗体が作られるのをおさえる
飲み薬
注射薬
点滴
アルキル化剤1)
  • 活発にはたらく免疫細胞が増えすぎないように止める
    →腎臓を攻撃する免疫細胞の数を少なくする
飲み薬
点滴
イノシン一リン酸脱水素酵素阻害薬(さんだつすいそこうそそがいやく)1)
  • リンパ球(リンパきゅう:敵を攻撃するときに中心となっている免疫細胞)が活発にならないようにする
    →腎臓がリンパ球から攻撃されるのをふせぐ
飲み薬
カルシニューリン阻害薬1)
  • T細胞(免疫システムで攻撃の命令を出す細胞)のはたらきをおさえる
    →腎臓が免疫細胞から攻撃されるのをふせぐ
飲み薬
免疫抑制剤の副作用とは?

免疫抑制剤の治療では、全身や心に副作用が出ることがあります。
たとえば、副腎皮質ステロイドでは薬を飲む量によってはムーンフェイス(顔がまるくなること)やいらだち、糖尿病などをはじめとした、全身や心にかかわる副作用が出ることがあります。2)
また、体をウイルスや細菌などの敵から守るための免疫力が低下します。
そのため手洗い・うがいやワクチンなどをして、感染症に注意する必要があります。

腎臓のはたらきを守る薬

MPGN・C3腎症が悪くなると、以下のような状態になりやすくなります。

  • 高血圧(こうけつあつ:血圧が高い状態)
  • 脂質異常症(ししついじょうしょう:血液の中のあぶらが増えすぎてしまう状態)※など

※脂質異常症は、ネフローゼ症候群(しょうこうぐん)を併発(へいはつ:ある病気と同じ時期に発症する別の病気のこと)している場合に特に出やすい症状2)です。

高血圧や脂質異常症などが続くと、ますます腎臓に負担がかかり、はたらきが悪くなってしまいます。
そのため腎臓のはたらきが今よりも下がらないように、患者さんの病気の状態に応じて以下のような飲み薬を使います。

腎臓のはたらき
薬の種類期待される効果
降圧剤(ACE阻害薬、ARBほか)
  • 血圧を下げる
  • 腎臓を保護する(ACE阻害薬やARBの場合)
HMG-CoA還元酵素(かんげんこうそ)阻害薬脂質のひとつである悪玉コレステロールを減らす
抗血小板剤(こうけっしょうばんざい)血液をさらさらにする
抗凝固剤(こうぎょうこざい)
選択的SGLT2阻害剤腎臓を保護する
  1. Alchi B, Jayne D. Membranoproliferative glomerulonephritis. Pediatr Nephrol. 25(8): 1409-18,2010
  2. 難治性腎障害に関する調査研究班編『エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2020』(東京医学社)p.1、p.67‐68
  3. 水野正司:補体活性の異常とC3腎症. 日本小児腎臓病学会雑誌35:5‐12,2,022
水野 正司 先生

監修医師
水野 正司 先生
名古屋大学大学院医学系研究科 腎不全システム治療学寄附講座 特任教授