二人三脚で歩む
C3腎症
- 伝える勇気が、道を開いた -

Aさん[高校3年生・C3腎症発症後約5年]

中学1年のときの健康診断で異常を指摘されたAさん。複数回の検査を受けた後、腎生検によってC3腎症と診断されました。聞いたこともない病名と治療の副作用に悩みながらも、お母様とともに通院を重ね、大好きなバレーボールも諦めませんでした。C3腎症を専門とする医師のもとで治療を受けたことがきっかけで、少しずつ前を向けるように。現在も治療を続けながら、来春の高校卒業後の就職に向けて歩み始めています。

Episode 1『?』しかなかった半年間

- 最初に異変が見つかったのは、中学1年のときだったそうですね。

Aさん:学校の尿検査で「再検査」と言われ、びっくりしました。自覚症状はなかったので、「えっ?」という感じで。

お母様:「娘はちょっと疲れているのかな?」くらいにしか思っていませんでした。だから、「再検査」と言われても、そこまで深刻に考えていなかったんです。

- すぐに病院を受診されたのですか?

お母様:近くの総合病院の小児科へ行きました。その日も尿検査と血液検査をしてもらい、先生から「しばらく様子を見ましょう」と言われました。それから毎月通院することになりました。

- 通院はどのくらい続いたのですか?

お母様:半年ほどです。通院のたびに学校を休む必要があり、私も仕事を休んで、いつも2人で通っていました。

- 通院を続けるなか、どんな気持ちで過ごしていたのですか?

お母様:「何の病気なの?」と、気になって仕方ありませんでした。検査をしても原因がはっきりしないので、ずっと『?』の状態が続きました。

Aさん:通院のたびに母と「わからなかったね」って話して、本当に『?』しかなかったです。

Episode 2検査でわかった『難病』という現実

- その後、遠方の大学病院を紹介されたそうですね。

お母様:先生に「病気のことをはっきりさせるには、腎生検をした方がいい」と勧められ、片道2時間近くかかる大学病院を紹介されました。腎臓の組織を取る検査だと説明されました。

Aさん:腎生検と聞いて、「ずっと『?』だったことがわかるかも」という気持ちになりました。だから、ちゃんとわかるなら生検を受けたいと思いました。

- 腎生検は夏休みを利用して受けられたのですね。

お母様:7月の終わりに大学病院を初めて受診し、8月上旬に入院して翌日検査をしました。1週間の入院期間中は、私も病室で寝泊まりして付き添いました。腎生検そのものよりも、初めての入院ということの方が、娘は気がかりだったと思います。

Aさん:まだ中学1年だったので、めちゃくちゃ不安でした。でも、母がずっとそばにいてくれたおかげで、不安な気持ちを乗り越えられました。検査自体は全身麻酔で痛みはまったくなく、今では傷ももうどこかわからなくなっています。

- 検査の結果、C3腎症と診断されたときは、どのような説明がありましたか?

お母様:『補体』や『タンパクが漏れている』といった難しい話でした。「珍しい病気です」と言われ、家に帰って調べたら『難病』と出てきて。「難病ということは、治らないの?」と、頭が真っ白になりました。

Aさん:その場では理解できなくて、母が「珍しい病気って?」と先生に聞いているときも、「何のことだろう」という感じでした。

- 病気のことを調べられて、どんな印象を持ちましたか?

お母様:インターネットで調べても、難しい言葉が並ぶ論文ばかりでした。ほかに調べる方法がなくて、今でもわからないことはあります。身内にしか相談できませんでしたし、私の母も主人も病気のことはわからなくて心細かったです。

Episode 3鏡を見るのがつらかった
- 副作用の日々

- 治療はどのように始まったのですか?

お母様:診断から少し経った中学1年の冬からお薬による治療が始まりました。食事制限はありませんでしたが、「激しい運動は控えるように」と言われました。

- Aさんは、運動制限についてどう感じましたか?

Aさん:部活動のバレーボールでは大会にも出ていたので、いちばん打ち込んでいたことを「やらないでください」と言われたのは、本当にショックでした。

- バレーボールは続けることができたのですか?

お母様:娘が「部活は辞めたくない」と言うので、勇気を出して先生に相談したところ、「激しい運動ではないから」とサーブだけは認めてもらえました。顧問の先生にも相談して「できることをやっていこう」という話になりました。

Aさん:サーブだけでもみんなと一緒にバレーができると言われ、すごく嬉しかったです。

- お薬を続けるなかで、最も困ったことは何でしたか?

Aさん:見た目です。お薬の副作用で顔が丸くふっくらとなってしまったことが何よりも一番つらかったです。朝起きて鏡を見るたびに最悪な気分になりました。副作用があることは先生から事前に聞いていて、理解していたんです。でも実際なってみるとすごく気になって、学校ではマスクが外せなくなってしまいました。

お母様:ちょうどコロナ禍で、マスクをすること自体は当たり前でした。でも、それは素顔を見せたくないという娘の強い不安の裏返しでもあり、落ち込んでいる様子を見て、私も本当につらかったです。また、食欲が抑えられなくなったり、生理が止まったりもしました。そのたびに病院の先生に相談したのですが、「治療にはお薬を続ける必要がある」と言われ、悩みが解決することはありませんでした。その上検査値も改善しないため、このつらい状況を続ける必要が本当にあるのだろうかと考えてしまいました。

- つらい時期を親子で支え合っていたのですね。

Aさん:病気のことは、クラスやバレー部の全員には話しませんでした。でも、仲のいい友達だけは知ってくれていたし、お母さんに「つらいよ」って伝えれば、それで十分でした。

Episode 4「運動はある程度、許容しています」
- 転院によってもたらされた光

- 数値が改善しないなか、転院を考えられたそうですね。

お母様:治療を続けても、検査値がよくなる兆しはありませんでした。そんななか、主治医の先生から、C3腎症を研究している別の大学病院の先生のことを教えてもらいました。

- その大学病院を選ばれた理由は?

お母様:「この病気に詳しい先生に一度相談してみたい。専門家に診てもらいたい」と、思ったからです。

- 新しい主治医との出会いは、いかがでしたか?

お母様:最初の診察で、「運動は禁止していませんので、相談しながら治療を進めましょう」と、さらっと言われました。もうそれしか覚えていないくらい、あまりに衝撃的でした。中学2年が終わる3月のことです。

Aさん:それまでずっと我慢してきたので、「そうなんだ」って本当にびっくりしました。

- 部活動のバレーボールには戻れたのですか?

Aさん:本格的な練習を1年以上していなかったので少しずつ再開し、最後のほうの試合にも出ることができました。間に合って、本当によかったです。

- お薬についても方針が変わっていったのですね。

お母様:通い始めた当初から、治療を新たに組み直すこととなり、「これまでのお薬を少しずつ減らして、別のお薬に変えていきましょう」という話になりました。新たな治療が進むにつれて、娘が悩んでいた顔の丸みも徐々に和らいでいきました。

Aさん:学校にも行きやすくなり、また学校に通うのが少しずつ楽しくなってきました。

- 治療の経過は、いかがでしたか?

お母様:見た目の悩みは減ったのですが、検査数値の大きな改善はありませんでした。「この病気と、どう付き合っていけばいいんだろう」と、モヤモヤした気持ちはずっと続いていました。ただ、先生から新たな治療法が出てきており、今後使える可能性があると、説明を受けています。「治療法がない」と言われていた頃とは、気持ちが全く違います。

Aさん:「新しい治療法でよくなるといいな」って、期待しています。

Episode 5二人三脚のその先へ
- 親子で、先生と、歩む道

- 振り返ってみて、いちばん不安だったこと、つらかったことは何でしょうか?

Aさん:不安だったのは、「これからどうなるんだろう」ということ。つらかったのは、やっぱり見た目がすごく変わってしまったことです。

お母様:本当に当時、副作用で娘がつらそうにしていたのがかわいそうで見ていられないほどでした。今でもこの先どうなるんだろうという不安があります。

- でも、先生にたくさん相談されたことが転機になったのですね。

お母様:わからないことは、例えば「激しい運動って、どこまでが激しいんですか?」など、具体的に聞くようにしました。当初は躊躇して質問もなかなか出来ませんでしたが、思い切って切り出してよかったです。子供のためですからその積み重ねがあったから、最後のバレーボールの大会にも間に合ったんだと思います。

- これからのことを教えてください。

Aさん:この夏、企業見学に行く予定です。進学も考えていたのですが、就職することに決めました。

お母様:これまで、娘とずっと二人三脚でやってきました。腎生検のときも一緒に泊まって、通院もいつも一緒。これからも、娘が元気に過ごしてくれること、ただそれだけを願っています。

- 最後に、同じ病気の患者さんやご家族に伝えたいことはありますか?

お母様:検査で引っかかったら、とにかく早めに病院へ行って欲しいです。それから、何でも「伝える」「尋ねる」という思い切りが大事かもしれません。そのためには、通院の合間に気になったことをメモしておくことも大切です。話しにくいと感じる方もいるかもしれませんが、話してみたら意外と先生に伝わると思います。

Aさん:副作用で本当に落ち込んだけど、つらいときは一人で抱え込まずに、家族や先生に話してよかったと思っています。